夕食とデザート よし、とガッツポーズをきめ、料理のための材料を抱えなおすセネルの家の前に立つクロエ。 「・・・すぅ・・・はぁ・・・」 ゆっくりと深呼吸する。 クロエは、ノーマに女らしくなるにはどうしたら良いかと相談した。 その結果がこれ。 お料理大作戦。 ネーミングから分かるが、そのまんま料理をするというもの。 し・・・しかし、夜に突然やってきて料理を作るなんて変に思われはしないか? それこそ女らしいとか、そんな問題じゃなくなるぞ・・・ もとはと言えば・・・ 一度は意を決してセネルの家に突入しようとしたが、どうにもこうにも足が進まない。 緊張しすぎなのは承知の上。 でも、緊張。 緊張という言葉のみが、クロエの頭の中をループする。 「えぇ〜い、こうなったらやけくそだ!」 ついにやけっぱちになったクロエ。 ドスンドスンと家の戸に近づき、ノックをして家の主の名を呼ぶ。 すぐに主が顔を出す。 「クロエ」 「クーリッジ!晩御飯は食べたか!?」 「へ?いや、まだだけど」 密かにホッと胸を撫で下ろすクロエ。 グッと決意を込めて。 「晩御飯・・・私に作らせてはくれないか?」 「え、クロエが?」 「あ・・・あぁ」 「本当か?ありがとうな。入れよ」 満面の笑みでのOK。 断られないかハラハラしていたクロエは意気揚々になる。 持ってきていたエプロンを着け、台所に立つ。 テキパキと料理をはじめるクロエ。 料理をはじめてしまえば集中できた。 ただ一心に、セネルに美味しい物を食べさせてあげようと、クロエは一生懸命になる。 そんなクロエの姿をじっと見るセネル。 視線に気付いたクロエは、何を見ているのだとセネルに問う。 「いや、新婚夫婦みたいでいいな〜って」 「!!??」 ボッと顔が赤くなるクロエ。 ニコニコと笑うセネル。 「ばっばかなことを言うんじゃない!!」 照れ隠しに大声で叫んで、また料理に集中する。 しばらくすると、セネルが台所へやって来て何かを作りはじめた。 「クーリッジ、何か作るのか?」 「ん?ちょっとスープでも」 「そんな、私がやるよ」 「いや、俺が作りたいんだ」 「・・・うん」 ひとり台所に立つクロエの姿を見ると、どうにも顔が緩んでしまうセネルは、気を紛らわすためにスープを作りはじめた。 それでも、近くで見れば見るほど一生懸命なクロエの姿がかわいくて、セネルは終始ニヤケ顔だったり。 「できたぞ!」 机の上に並べられたできたての料理。 色とりどりに良い匂いを放っている。 メインのものからサラダやデザートまで。 そして、セネルの作ったスープ。 強いコンソメの香りがただよう。 「さ、さぁ食べてくれ」 「あぁ、いただきます」 料理を口に運ぶセネル。 クロエはセネルの反応が気になりそわそわする。 ゆっくりと噛み砕いた物をのどに通す。 「うん、美味い!」 満面の笑みでセネルが言うと、クロエはとても幸せな気分になる。 心の中で盛大にノーマに感謝する。 「クロエも食べろよ」 「うん」 しばらく後、皿の上は随分と片付いた。 残っているのはデザートのみ。 それと、セネルの碗にあるスープ。 「クロエ、ありがとうな」 「え?」 「こんな美味いメシ作ってもらってさ」 「いや・・・クーリッジのスープも美味しかったぞ」 「たいしたもんじゃないけどな」 「そうか?」 そこで、セネルがじっとクロエの顔を見る。 「な・・・なんだ?」 「そんなにスープ美味かったか?」 「う・・・うん」 それを聞いたセネルは、にんまりと笑いまだ残っていた自分のスープを口に含んだ。 そして、すばやくクロエの顎をつかみ口付ける。 すると、先程口に含んだスープがセネルの口内からクロエの口の中へと入っていく。 コンソメの味が広がる。 スープを飲み込んだクロエは、非難の声を出そうとするが、いまだ口は塞がれたまま。 調子にのったセネルは、クロエの舌を絡み取る。 「んん・・・く・・・」 非難を浴びせようとした声は、甘い響きに変わる。 力が抜けたクロエを、セネルは容赦なく押し倒す。 そこで、やっと口が解放されクロエが声をはりあげる。 「はぁ・・クーリッジ・・ちょっと、まだデザートが残っているだろう!?」 もっともらしい理由をつけて、この状況から逃れようとするクロエ。 そんなことお構いなしのセネルは言う。 「デザートはクロエで」 「!?」 何ともまぁ恥かしいセリフをぬけぬけと!!! 怒りの声を出そうとしても、すぐに口が塞がれる。 再び、ゆっくりとクロエの口内を侵食していくセネル。 クロエはもう抵抗できなくなっていた。 翌日の昼、セネルの家を出たクロエは、病院へ戻る道でノーマと会った。 「クー!作戦実行した?」 「え・・・う・・・うん」 「で、成功した!?」 何だか楽しそうに質問してくるノーマ。 作戦成功かの問いに、クロエは昨晩の記憶を掘り起こす。 そして、顔を赤くする。 「ん・・・いや・・・まぁ・・・」 「・・・ふ〜ん♪」 曖昧に返事をしてみたが、ノーマには全部分かってしまったらしい。 そして、一度思い出したらともかく恥かしくなって、ノーマに適当に別れを告げ走り去った。 まだ、ほのかにスープの香りがただよっている気がした。 END 2005年12月執筆 2008年3月修正 くっは〜ッ!! コンソメかよ!…ではなく…相も変わらず、今の私には書けない砂糖げろんげろんもの。 多分、口うつしがやりたかったんでしょうねぇ…セネセネめ…。 お兄ちゃんはクロエちゃんに一直線になってしまいましたとサ。ちゃんちゃん! では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月9日 |