心地よい歌


確かにあの歌声はいいと思う
澄きとおっていて、繊細で
そんなこと思ってるなんて、死んでも知られたくねー









心地よい歌









「あなた、本当に譜歌も知らないの?」
「だー知らねーっつってんだろ!」
「世間知らずもいいとこね」
「んだと!」

出逢って日も浅いはずなのに、毎日毎日ケンカを繰り返すふたり。
ルークとティア。
互いの音素の共鳴によって起きた超振動で、マルクト帝国内へ飛ばされ数日。
いつまでたってもケンカばかり。
どれもこれも、ルークの性格に問題有りかと。
戦闘中でさえも、ケンカ腰であったりする程。

本当になんも知らねーっつーの

自分は記憶障害なのだから仕方ないと思うルーク。

ただ・・・

ただ、ルークにわかることは。
自分はティアの歌声が好きだということ。


「深淵へといざなう旋律」

その言葉を合図に紡がれる歌。
とてもとても美しい音。



「なぁ・・・ティア・・・お前の歌・・・」
「なにかしら?」
「・・・なんでもねーよ!」
「?」

面と向かって言えるわけがない。
心地いいなんて。

でも、あの歌を聴けるのは自分だけ。
そんな優越感があった。


しかし、状況は変わってしまう。

「ティアの歌は心地がいい。懐かしい感じがします」
「導師イオン・・・そ・・・そんな」

聴衆は増員した。

「いや、ホントだぜ。いい声してる」
「あ・・・ありがとうガイ」
「う・・うわぁ!」
「あ・・ごめんなさい」

ティアが不用意に近づいてしまい、情けない声を上げて後退してしまうガイ。

「ま、確かにいい声してるよな・・・性格はアレだけど」
「ルーク!」

・・・・
なんだか悔しい

ルークの胸の内は、もやもやとした屈辱感のようなもので覆われてしまう。
ティアの歌を聴けるのは自分だけだったはずなのに。
そんな風に思ったのを「うざい」と感じたルーク。
その感情の名前も知らずに。

「ルーク?どうしたの」
「な・・・なんでもねーよ!さっさと行くぞ!」
「・・・もぅ」

照れ隠しとも言える言動をしてしまうルーク。

「んだよ・・・ったく・・・」

いつまでたっても、ルークはこの感情を理解できないでいた。

END

2005年12月執筆
2008年3月修正

ヤキモチルークのリクエストでした。
…あれ?ヤキモチ?
私にしては珍しく親善大使です。
では、読んでくださった方、ありがとうございました!
2008年3月11日