laissez faire 照りつける陽射しに身を焦がす大地。 太陽が光り輝く側面の温度は上昇を続ける。 陽が強くなるこの時期、ダアト近郊の浜辺は賑やかになる。 パダミヤ大陸は海水浴が可能な場所が多くあるのだ。 そして、この暑さにまいったルーク達もまた、浜辺に来ていた。 「うーわー超日焼けしそー」 「全くですわ。先にちゃんとクリームを塗っておきましょう」 「そうね」 身が焼かれることを嫌い、女性3人は日焼け対策をはじめた。 「ほれルーク。ティアに見とれてるんじゃねぇぞ」 「ばっ!ちっげーよ!」 見ていたつもりもないが、そうガイにからかわれルークは冷や汗をたらす。 すでに水着姿の彼女達は艶やかで、ティアにいたっては相変わらずスパの借り物水着であるのに華やかだ。 見とれてしまうのもしかたない、と言い訳をするルーク。 「いや〜若いですね〜」 「って、お前ははなっからバスローブ着用かよ」 現れたジェイドは、例のバスローズ姿。 これはこれで目のやり場に困る。 「いや〜私はもう年ですから、海で泳ぐのはちょっと」 「なにが年だよ・・・」 スタスタとその場を離れたジェイドは、パラソルが作る日陰のもとの椅子に腰掛けた。 「よしルーク。ひと泳ぎするか!」 「おーし!」 「いんや〜浜辺の男共の視線はティアとナタリアのもんだね〜」 「あら、アニスだって見られているのではなくて?」 「わっは〜そうかな〜・・・(そうだ、見物料とかとれるかな)」 ダアトの人や他の街から来た人でも、浜辺にいる男性の視線を集めるのはティアやナタリア。 華やかな水着姿の彼女達は実に目立つ。 「なんだか・・・落ち着かないわ・・・」 ピオニー陛下から頂いた“すごすぎる水着”を着ているわけでもないが、水着姿をたくさんの人に見られるというのは落ち着かないティア。 「ね〜早く泳ご〜!」 「そ、そうね」 アニスに引っ張られてティアとナタリアは海に入っていった。 足にかかる海水は暑い陽射しの中でも冷たく美しい。 透きとおる海に足を踏み入れ、上昇を続ける体温を下げる。 「冷たくて気持ちいいですわ〜」 「ほんと・・・」 「ティア!ナタリア!これで遊ぼ♪」 そう言ってアニスが持ってきたのは、カラフルなビーチボール。 ナタリアが賛同し、ボールで遊ぶことになる。 「いっくよ〜!」 アニスが手首のスナップを使い、ボールを高く飛ばす。 足元でパシャっと水しぶきがする。 弧を描き目の前に降ってくるボールをティアが返す。 幾度かラリーが続くと自然とボールを返す際の声は高くなる。 「あ、なにやってんだ〜?」 と、そこに好奇心を含んだ声を出しながらルークがやって来た。 すぐ後ろにはガイもいる。 「あ、ルークもガイも一緒にやろ〜♪」 「おっしゃ〜負けないぜ〜!」 「なんの勝負よ・・・」 途中参加でルークとガイも加わり、より賑やかになる。 長くラリーが続いていた時だった。 ルークが掛け声を上げ高く飛ばしたボールは、誰の目の前にも行かずティアの数メートル背後に落ちた。 「ルーク、なにやってんだ」 「悪い!」 「もう・・・」 ティアはしぶしぶボールを回収にいく。 ボールは波に煽られ、少しずつ遠ざかる。 ティアはボールに追いつこうと泳いで進む。 そして、足に違和感が襲い掛かる。 「!?」 右足がピンと張るのを感じる。 攣ってしまったのだ。 上手く泳ぐことができなくなり、ティアは焦り水中でもがく。 「ティア!?」 異変を察知したルーク達が次々に彼女の名を叫ぶ。 ティアの体はしだいに水の中に飲み込まれていく。 空が遠ざかる中、気のせいか意識までも遠のいていく。 「ティア!!」 彼女を助けようと皆が動く中、ルークはいち早くティアに近づいた。 ルークは水中で沈んでいくティアの腕を捉え、体を引き寄せて抱きとめた。 次の瞬間、大きな波に煽られルークはティアの体を強く抱きしめながら意識を手放してしまった。 「・・・う・・・」 ティアが目を覚ました場所は、人のいない砂浜。 周囲は高い岩の壁に囲まれている。 「そういえば・・・私・・・」 つい先程自分の身に起きたことを思い出す。 ボールを取りにいこうとして・・・ 足を攣って・・・ そして・・・ 「ルーク!」 意識が完全になくなる直前、ルークが自分を呼ぶ声を聞き、そして彼が抱きとめてくれたのを思い出した。 うつろだった意識が覚醒すると、自分の隣で横たわるルークを見つけることができた。 ルークは目を閉じ動かない。 「ルーク!?」 ティアは彼の体を大きく揺さぶる。 しかし、ピクリとも反応しない。 もしかして・・・ 考えたくもないことを考え、ティアは大きく頭を横に振る。 少し躊躇いながらティアは自分の耳をルークの口元に寄せる。 「!!」 ルークは息をしていなかった。 嘘・・・でしょ・・・ 一瞬でティアの頭はぐしゃぐしゃになる。 しばらくは何もできないでいた。 しかし、こんな時はどうしたら良いのか、それを思い出した。 「そうだわ、人工呼吸をすれば・・・」 軍事訓練の一環として、人工呼吸法は学んでいる。 教えられたとおりにやれば良いのだ。 ティアは自らの顔をルークに近づける。 いざやろうとすると、羞恥心が爆発的にこみ上げてくる。 でも、ルークを助けなくちゃ!! きっと顔は真っ赤だろうと思いながら、ティアは訓練で教えられたとおりに行動する。 大きく深呼吸をする。 すると。 「う・・・」 突然ルークの口から声が漏れ、そしてほんの少し目が開かれる。 「きゃあ!」 とてつもない至近距離に顔があったティアは、突然の出来事に驚き、大急ぎで顔を離した。 ルークは咳き込みながら上半身を起こす。 その際に、少しばかり飲み込んでいた海水を吐き出す。 「ルーク!!」 「うおわ!」 固まっていたティアは、嬉しさのあまりルークに飛びついた。 「良かった・・・私・・・」 ティアは涙をこらえた声で言う。 ルークは状況がつかめずただどぎまぎする。 ひとつテンポが遅れて、ルークは何が起きたのか思い出した。 と、がばっとティアの両肩をつかみ、目を合わせる。 「そうだ!ティア無事だったのか!」 「えぇ・・・あなたのおかげよ。ありがとう」 「あ・・・いや」 「大丈夫よ!」 「駄目だ。ほら、乗れよ」 「・・・」 ルークはティアを気遣い、皆の所までおぶっていくと言った。 ティアは大丈夫だと言い張ったが、ルークにおされついに了承した。 「お、重いでしょう?」 「全然平気だっつーの」 ルークは軽々とティアをおぶった。 彼の大きな背中にティアは安心感を感じた。 暖かい陽だまりの匂い。 自然とティアはルークの背中にぴったりと体をつけた。 その瞬間に、少しルークがビクついたことにティアは気付かなかった。 さらに、ルークの顔がそれはそれは真っ赤になっていたことにも気付かなかった。 END 2006年4月執筆 2008年3月修正 キリ番リクエスト、海水浴でルクティアでした。 しかし…私は海に行ったこともなければ、足を攣ったこともないんですよね…。 ちなみに何故海水浴の場所がパダミヤ大陸なのかは、好評発売中小説TOA〜聖なる焔と七ノ歌〜の219ページを見ればわかるそうですが。 …あ、小説売っちゃったから確認できない…ッ!! では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月13日 |