すれ違って、またつながって 「もう!ルークのわからずや!」 「なんとでも言えよ!」 音機関の立ち並ぶベルケンドの街に響いたふたつの怒声。 すぐに宿屋の一室から、派手な音をたて扉を開けルークが出てきた。 納得いかないといったしかめっ面のルークは、スタスタと宿を出て行った。 「ルークのやつ・・・どうしたんだ?」 「さぁ・・・ティアとケンカでもしたんじゃない?」 「まぁ。では痴話喧嘩というものですの?」 今起きていることを詮索するジェイドを除く三人。 ジェイドは涼しげな顔で茶をすすっている。 「しゃーない。俺、ちょっとルークを見てくるよ」 そう言って、ガイはルークの後を追って宿を出た。 「では、私はティアを見てきますわ」 「あ〜ん私も私も〜!」 ナタリアとアニスは、ティアのいる部屋へ。 ひとり残ったジェイド。 「おやおや」 と、楽しそうにことの成り行きを見守る。 「ルーク!」 街からほんの少し離れた場所で、ルークは剣をふっていた。 「ガイ・・・どうしたんだよ」 「それはこっちのセリフだ・・・ティアと喧嘩でもしたのか?」 さっそく話をきりだすとルークは顔をしかめっ面にする。 否、駄々をこねる子供の顔だ。 「だって・・・ティアの奴が・・・」 「ん?なんだ、話してみろ」 「俺・・・ティアに前線に出るなって言ったんだ」 「まぁ。ルークは何を突然」 「急にそんなこと言われても納得できなくて・・・」 「そりゃそーだよ」 ベッドに座るティアの話を聞くナタリアとアニス。 ティアはどうしても納得できないといった口ぶりで、今しがた起きたことを説明する。 「私・・・今こんな体で、ただでさえ皆に迷惑をかけてるのに、戦いに出なかったらただの足手まといになってしまうわ・・・」 「そんな、迷惑だなんて思ってませんわよ」 「でもルークは何でそんなこと言ったんだろ?」 「だって心配だろ!?」 当たり前だと言わんばかりの気迫で言うルーク。 「まぁ、あんな体で戦闘に出したら心配とは思うが」 「ティアには・・・無理させたくねぇんだよ」 障気に蝕まれているティアの体を気遣って、戦闘への参加をやめさせようとしたルーク。 そんなルークの想いなどつゆ知らず。 宿では女性陣がルークへの批難を語らっていたり。 「しかし、ずいぶんと言い争っていたようだが」 「いつの間にか・・・な。意見が違うとどうにも・・・」 はぁとため息をつくルーク。 「私・・・ルークのことずっと見てるって約束したもの・・・私のことで迷惑をかけたくないの」 「ティア・・・」 ティアはティアで、ルークを想って彼の意見を否定した。 上手い具合にすれ違ってしまったふたり。 そのことに気付かず、お互い怒ってしまうあたりまだまだ子供と言うのであろうか。 「ともかく、とっとと仲直りしちまえよルーク」 「・・・そりゃ・・・したいけど・・・顔、会わせづらいし・・・」 左手に持つ剣を鞘に戻し、ルークはその場に座り込む。 「じゃあルーク。ひとつ教えてやるよ」 「ありがとうナタリア、アニス。話したら落ち着いたわ」 「いいえ。お役にたてたなら嬉しいですわ」 「(っていうか野次馬根性だし〜♪)」 トントンと扉を叩く音がする。 どうぞ、とティアが応対すると、少し落ち込んだようなルークが入ってくる。 「あ・・・えと・・・」 と、ルークがどもっているとナタリアとアニスは部屋から出て行った。 「・・・なに?」 少しばかり冷たく聞こえてしまうティアの声。 しかし、ここで退いては仲直りなどできないのだ。 「あのさ・・・ティア・・・さっきのことだけど・・・」 「・・・」 「もう戦いにでるな、とは言わない」 そのルークの言い方には、明らかに続きがあるのがわかった。 ティアは黙ったまま。 「だから、絶対俺から離れないでくれ」 「え?」 「何があっても、俺が絶対ティアを守るから」 守る・・・というより、守りたいからなんだけど・・・とルークは思う。 ティアは何も言ってこない。 ルークは不安になってしまう。 「・・・ティア?」 「あ・・・その・・・ありが・・・とう」 「い・・・いや・・・」 何がそんなに照れるのか自分でもわからない。 なのに、ふたりの顔は赤くなってしまう。 「さっきはごめんな」 「ううん。私こそ・・・ごめんなさい」 「ぶ〜もう終わり〜?」 「まぁまぁ」 ルークとティアのいる部屋の戸に耳をひっつけて並ぶ、またもやジェイドを除く三人。 「でも、ガイ。あなたルークに何か言いましたの?」 「ん?ただ『男なら自分の手で守るもんだ』って言ってやっただけさ」 「なにそれ〜?」 「いいんだよ。女にはわからなくて」 相変わらずジェイドはひとりで茶をすすっていた。 あっけなく幕の下りた痴話喧嘩に 「若いですねぇ」 と、感想をもらしながら。 翌日から、戦闘中ルークは後衛のティアを守るのに専念。 そのおかげで、ガイの負担が増えてしまった。 余計なこと言わなきゃよかったかも・・・ 自分で言った手前、ルークには何も言えないガイ。 その様子をジェイドが生暖かく見守っていた。 END 2006年2月執筆 2008年3月執筆 キリ番リクエスト、喧嘩して仲直りするルクティア…だったかな。 お互いを想う故に喧嘩するって…どんだけ痴話喧嘩なんですか! むむむ…喧嘩って、なんだか書くのが難しかったです。 では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月12日 |