どうかと思う相談所 「は〜い☆アニスちゃんの何でも相談所〜♪」 「・・・は?」 「相談なんでしょ?」 「あぁ・・・」 何年たっても変わらぬ明るさと言うか、高いテンションを保ち続けるアニス。 これで、つい最近ローレライ教団導師に就任したと言うのだから、大したものだ。 そんなアニスに相談をしに来たのは、こちらも相変わらずという感じのルークだ。 どこか落ち込んだ雰囲気を出しながらダアトへとやって来たのだ。 「私、こう見えても街の皆の相談に乗ってあげてるんだよ☆」 「え、マジ?・・・どうせお金取ってるんだろ」 「もち♪」 「・・・」 導師になろうがどうなろうがアニスはアニスだと言うことだ。 「で、相談って?」 「・・・・・・最近、ティアの俺を見る目が変なんだ」 「へ?」 「よくわかんねぇけど・・・なんか、悩ましげに見てくると言うか」 「ほ〜・・・」 ルークの悩みは、大事な大事な奥さんの事だった。 既に結婚して随分と経ち、娘だっているのに、今更このふたりに何があると言うのだとアニスは考える。 あ〜・・・でも、バカップルっぽいオチがありそうだな〜・・・ と、思うとちょっと憂鬱で面白そうだった。 「ふんふん・・・じゃあ、アニスちゃんがそれとなくティアに聞いてきてあげるね」 「本当か!?」 「うん♪だから、相談料金は報告が終わったらでいいからね〜」 「あ・・・あぁ」 あぁ・・・やっぱり払うのか・・・そりゃそうだよな 昔の馴染みとか、そんな事は関係ない。 導師様々だ。 「アニス、忙しいんじゃないの?」 「ん〜そうでもないよ〜♪」 暇な時間を作り、アニスはティアに会いに彼女の家を訪れた。 元々ルークと打ち合わせをしていたので、ルークは娘とふたりで出かけて、家にはティアひとりだった。 しかし、犬はいる。 アニスは“イオン”という名を持っている犬を気にしながら、ティアに話し出した。 「ルークが、最近のティアの自分を見る目が変って気にしてるよ〜?」 しかもかなり率直だった。 「え!?・・・・・・」 悩むティア。 どうやら少なからず思い当たる節はあるようだ。 「何々、どうしたの?」 「その・・・ね・・・」 ごにょごにょと語尾を濁しまくりなティア。 アニスはぐいぐいと詰め寄って、耳を彼女の口元に寄せる。 すると、ティアは小さな小さな声で真相を語ってくれた。 「ふんふん・・・・・・な〜るほど」 あぁ・・・やっぱり、そんなこったろうとは思ってたけど 全てを話した後、ティアは俯いて恥ずかしそうにしていた。 いつまでもバカップルな・・・ とりあえず、事の真相を知ったアニスはこの状況をなんとかしなくてはと策を考え始める。 実に面白い状況だが、まぁ昔の馴染みとして打開してやるのが常だ。 「よっし・・・ねぇ、ティア。明日の午後に、ダアトに来てくれない?ちょっと話があるから☆」 「え?・・・えぇ、わかったわ」 「ルーク?」 「ティア!?」 何故か同じ家に住んでいるはずなのに、外・・・ダアトでばったり会ってふたりは驚愕した。 「あなた、どうして此処に?」 「俺はアニスに・・・」 今日は約束の日だ。 アニスが目の前の彼女に聞き込みにいった報告を受ける大切な日。 「え・・・私もアニスに会いに・・・」 「・・・まさか・・・はめられた!?」 「え?」 「あ、いや・・・」 そうとしか考えられなかった。 アニスのやりそうな事だ。 「・・・」 「・・・」 しばらく重い沈黙が続いてしまう。 ばったり会って、アニスにはめられて。 会話が出てくるとは思えない。 「あのさ・・・」 「ねぇ・・・」 と、ふたり同時に切り出すまで随分かかった。 ふたりで口を揃えて、先に言ってと言う。 「・・・・・・」 堪りかねてルークが口を開いた。 「〜〜〜っごめん!!」 「?どうして・・・謝るの?」 「その・・・俺、気付かないうちにティアに嫌なことしてたんじゃないかって思って」 ティアの目が変になったのは、きっと自分が何か良からぬ事をしでかしてしまい、愛想を尽かされてしまったのでは・・・。 本当にそう考えていた。 「そんな事・・・全然そんな事ないのよ!!・・・」 「じゃ、じゃあ・・・」 ティアも、彼の言わんとしている事がよくわかっていた。 きっと、彼はアニスに相談した。 だからアニスがあんなことを聞いてきたのだとも理解できた。 「その・・・ね・・・」 しかし、言えない。 彼の誤解をそのままにしておくのは非常に辛い。 今すぐにでも解きたい。 だが、羞恥心が先立ってしまうのだ。 いくつになってもティアはティアなのだ。 「あ・・・アニスに聞いて・・・くれないかしら・・・」 と、責任放棄をして逃げ去った。 もしかしたら、昔よりも恥ずかしがりやになっているのかもしれない。 ルークは呆然とするしかなく、アニスが来るまでひとりつっ立っていた。 「・・・アニス・・・教えてくれ」 ルークは困惑や不安やもうそれはそれは色々な感情が混ぜこぜになり、わけがわからなくなっていた。 ただ、アニスに尋ねる事しかできない。 「まったく〜・・・ティアってば〜・・・しっかたないなぁ」 そう言いながらも、アニスはなんだか面白そうに語りだしてくれた。 「ティアはね、昔の可愛いルークが好きだったんだって」 「・・・は?」 「それでね、最近のルークは随分大人になった所為か、可愛いって感じがなくなったんだって」 「・・・はぁ」 「でもね、大人になったルークは可愛いんじゃなくてカッコイイんだって」 「・・・・・・」 「可愛いのが好きだけど〜カッコイイルークももっと・・・」 「・・・・・・」 「らしいよ♪」 「!!!!!」 状況の把握に随分かかったルークは、今の話が理解できた途端に顔を真っ赤にした。 「それ、ティアがマジに?」 「うん・・・ティアってば、これは自分で言ったほうが良かったと思うのに〜」 しかし、ルークがアニスが仲介して言ってくれて助かったと思った。 こんな事を彼女本人の口から言われたら・・・と、考えると・・・。 真っ赤な顔を手で押さえるルークを見て バカップル と思うも、口にはしないアニス。 「あ、ありがとな、アニス・・・」 「どういたしまして♪」 と、言いながら立ち去ろうとするルークの腕を掴み一言付け加える。 「相談料金、ティアの相談にものってやったようなもんだから、二人分で・・・そうだねぇ6000ガルド♪」 「!!??」 家に帰ったルークは、ティアの顔を見て真っ赤に。 そんなルークを見て、聞いてきたのだと理解したティアも顔を赤く。 いくつになっても初々しい。 ある意味で幸せなバカップル。 END 2006年7月執筆 2008年3月修正 いやいや、アニスさん本当はお金とりませんよ! 街の人の相談に乗るのは本当です。 場合によってはお金もとる、ということです…昔の馴染みのバカップルぶりを見せつけられて、ごちそうさま料金ですね(笑 では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月13日 |