酒の味


酒の味


いつの間に仲良くなったのかは知らない。
でも、最近ゼロスが突然ミズホのあたしの家にやって来ては、おじいちゃんと酒盛りになる。

しかも、酔っ払いながらあたしの話をするんだ。

「いや〜神子殿なかなかの飲みっぷり」
「いやいや〜まだまだですぜ〜♪」

既にふたり共泥酔状態。
あたしももう20歳だからお酒は飲むけど・・・。
こんなベロンベロンになるまで飲みたかないね。

「この勢いでしいなを嫁にもらってくれんかの〜?」

どの勢いだ!!

「ちょっと、おじいちゃん!」
「俺様ならかまいませんよ〜♪」
「あたしはかまうわ!」
「こら、しいな。照れるのはよさんか」
「照れてないわ!」

すると、酔っ払いのふたりは馬鹿笑いを上げる。

こいつらいっぺんはったおしてやろうか・・・。
拳をグーで強く握る。


ったく・・・。
冗談でも言っていいことと悪いことがあるよ。


心の中で毒を吐き、しいなはふたりがいる酒臭い部屋から出る。
きっと赤くなっているだろう顔を見られないため。



しばらくして、しいなが酔っ払いふたり組みの所へ戻ると、ふたりは気持ち良さそうに寝ていた。

「・・・ったく」

何とも迷惑な酔っ払いめ。

「ほらゼロス、起きな」

酒のビンで溢れかえっている机に突っ伏しているゼロスの肩を揺する。

「う〜ん・・・今日は泊まってく〜・・・」
「今日もだろ!」
「そだっけ〜?」
「そうだよ!」

今まで何度も酔っ払ったゼロスをうちに泊めた。
正直、邪魔って言えば邪魔だ。

ま、しかたないかなって思うのは甘いかな。


「ホラ、立つ!」
「う〜・・・」

酒臭いゼロスを無理やり立たせ、肩を貸す。
そして、誰も使っていない部屋へ連れて行く。
布団をひいてやり、そこに寝かせる。

「し〜な〜」
「なんだい?」
「う〜・・・」
「・・・・・」

寝ぼけているのは明白。
酔っ払いの相手なんかしてられるかと部屋を出ようとする。

「待てって」
「うわぁ!」

いつの間に上半身を起こしたのか、ゼロスは自らの腕を伸ばし、しいなの手を取った。

しいなはバランスを崩し、その場に倒れる。
ゼロスに上から見下ろされる形になる。

「な!なにするんだい!」

しいなが叫んだ後、すぐに口はふさがれた。

「!?」
ゼロスのそれによって。
酒のにおいが強い。
しいなの頭がクラッとする。

「ん・・・はぁ・・・」

しいなが息をしようと少しばかり口を開けば、容赦なくゼロスは舌を侵入させてくる。
巧みにしいなの舌を絡ませる。
逃げても逃げても追いかけてくる。

体を離そうとすると、腕を使い強く抱いてくる。

「ゼ・・・ロス・・・ん」

深い深い口付け。
そして、酒のにおい。
しいなの頭が働かなくなる。

そっとゼロスが唇を放す。
実際は短い時間だったのだろう。
しかし、しいなにはとてつもなく長い時間だったと感じられた。

急いでしいなは体を離す。

「突然何するんだい!!」
「いや〜嫁にもらうならこんくらいアリかな〜って」
「何が嫁だ!この酔っ払い!!」

ここでガツーンと一発。
思いっきりゼロスを殴って、しいなは部屋から出た。

「いってぇ〜・・・」

殴られた箇所に手を当てながら、ゼロスはぼやく。


「・・・酔っ払ってるからってこんなことするかよ・・・」


部屋から出たしいなは、顔の赤さが消えるまで随分かかった。

口の中には酒の味。

決して甘くないはずなのに、とてつもなく甘い味。

END

2005年11月執筆
2008年3月修正

恥ずかしすぎる…何がってそれは私の文章の拙さです…。
思いっきり修正してしまおうかとも思いましたが、それでは昔の私があまりに報われない気がしたので、あえてほとんど修正なしです。
まだ小説を書き始めて間もなかった頃のものですので、大目に見る…ということで…逃げますッ!!脱兎のごとく!!
最近の私はこうした甘い感じのものを書きませんので、これはこれで楽しんで頂けたらと思います。
では、読んでくださった方、本当にありがとうございました!
2008年3月8日