死ぬことを受け入れていた 生きたい そう思う けど、現実はそんな甘いもんじゃないんだ だからせめて夢が見たかった 皆と一緒に笑っていられるような ティアとずっと一緒にいられるような ring〜後編*silver〜 ルークの左手に転がるシルバーリング。 ティアの話では、この指輪を売っていた露天と店主は一瞬で消えてしまったそうだ。 想い人と結ばれるシルバーリング。 本当のことような。 嘘のような。 正直、半信半疑である。 しかし、店主に言われるままにルークは行動したのだ。 夢を見たかったから ティアと笑っていたかったんだ ふと、自分が贈った紅い指輪を幸せそうに眺めるティアを見かける場面がある。 近寄るとそそくさと指輪を隠してはぐらかされてしまうが。 でも、少し笑ってくれる。 今が一番幸せだ そう思いたくないのに、確かに幸福を感じてしまうのだ。 これじゃ俺はまた卑屈になるのか 怒られちまう 悲しませちまう そう思ったら、考えを変えられた。 「ルーク・・・必ず帰ってきて!」 崩れ落ちる栄光の大地に響く、少し涙の混じったティアの声。 「あぁ。必ず帰る。約束する」 「必ずよ・・・」 決してティアは涙を流しはしない。 必死にこらえているのが見受けられる。 ルークはそっとティアに近づき、彼女の手をとる。 そして自分のシルバーリングを渡す。 「ルーク?」 「ティアの指輪も出して」 ルークは落ち着いて言った。 今から死ぬのにな・・・ でも・・・ 「はい」 ティアは言われるがまま、自分の紅い指輪をルークに差し出した。 ルークは微笑みながらそれを受け取った。 ティアはわけがわからず、ただルークの言葉を待った。 「俺がティアの指輪を預かる。だからティアは俺の指輪を預かってくれ」 ルークはぎゅっと強く強く紅い指輪を握る。 ティアも同じようにシルバーリングを握りしめた。 「帰ってきたら・・・返すから」 「・・・絶対よ」 「うん」 「・・・約束よ」 「うん」 それでもティアは泣かない。 でも、少し微笑んでくれた。 これからも彼女と笑っていたかった でもそれは叶わないから せめて夢を見させてくれ 崩れるエルドラントの中、もうひとりの自分と共に俺は消えることを覚悟した 「でも、あなたは約束通り帰ってきて指輪を返してくれたわ」 「確かに死んだと思ったんだけどな」 「もういいじゃない。あなたは確かに今ここにいる。それで十分じゃない」 「・・・そうだな」 決して混ざり合わないような紅い指輪とシルバーの指輪を眺めながら話したあの時の気持ち。 彼女は、そんなのはどうでもいいと言って笑う。 俺はそんなティアも見て、泣きそうになる程幸せだと感じる シルバーリングは本物だったんだ そして、紅い指輪は今はティアの左手の薬指で凛と輝いている。 END 2006年2月執筆 2008年3月修正 ちょっとED後も入りました。 指輪の交換が書きたかったようです。 コメントのしようがない(笑 お幸せに!!! では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月12日 |