白いワンピース


白いワンピース


突然病院の部屋にやって来て、黄色い包装紙に包まれた物をつき出してきたのは、シャーリィとノーマだった。
あきらかに何かを企んでいる笑みを浮かべて。

「クロエ、もうすぐ誕生日だよね」

語尾にハートがついてくるような口調のシャーリィ。

「あたしとリッちゃんからのささやかなプレゼントだよ!」

あからさまに何か企んでいる顔のノーマ。

「あ・・・ありがとう」

自分の誕生日を覚えていてくれたのは、とても嬉しい。
でも、やはりふたりの様子が気になって仕方ない。

「開けてみてもいいか?」
「ど〜ぞど〜ぞ」

とは言え、受け取った大切なプレゼント。
期待を胸に中身を確認する。

出てきたのは、純白の色をした上着とスカートが同じ布でひと続きになっている服。

白いワンピース。

上は首も肩も出た涼しげな形。
下は膝までのスカート。
裾が少し広がっていて、かわいい印象。

正直、私には分不相応としか思えない

「ノーマと一生懸命選んだんだよ」
「これなら、ぜ〜ったいクーに似合うよ!」
「そ・・・そうか?」

手にある美しい白いワンピースを見る。

「クロエの黒髪に、よく映えると思うの」
「・・・う〜ん・・・」
「ねぇ、クー着てみて!」
「え・・・今ここでか?」
「もっちろん♪」

ノーマに押されて、半分無理やりにワンピースを着る。
どうにも落ち着かない。

「やっぱり似合うよ!」
「そりゃ〜あたしとリッちゃんが選んだんだもん。当たり前だね」

普段の服と違うと、やはり落ち着かない。
一度着たから良いだろうと思い、服を脱ごうとする。

「あ、そうそうクー。セネセネが呼んでたよ」
「え?クーリッジが?」
「ほら、早く行かなきゃ!」
「え、ちょ・・ちょっとシャーリィ!」

シャーリィに無理やり病院を追い出されたクロエ。
もちろん、白いワンピースを着たままで。
・・・これで・・・クーリッジの家に行けと?
恥ずかしい!!

クロエの頭は真っ白になった。
今、自分の着ている白に負けない程に。

病院に残っているノーマとシャーリィが、こっそりお互いに向けてVサインをしていたのを、クロエが知る由はない。

仕方なくセネルの家に行くことにした。
恥かしいけど、呼んでいたというならば行かなくては。
ここ数年着てなかったスカートに違和感を感じながら歩く。
変じゃないだろうか・・・そればかり考える。

クロエは、あっという間にセネルの家の前に着いてしまう。

「・・・・・・」

意を決して家の戸を叩く。

「クーリッジ?」

しばらくすると、戸が開きセネルが顔を出した。

「クロエ・・・!?」

セネルはクロエの体全体を見て、あきらかに驚いている。

「その格好・・・どうしたんだ?」
「え・・・あ・・・その、シャーリィとノーマが・・・」

羞恥のあまり、声が途切れ途切れになる。

「まぁ、中入れよ」

そう言われ、家の中へ入る。

「その・・・私を呼んでいたと聞いたのだが」

話題をこの白いワンピースへ向けないため、早々に切り出す。

「あぁ、そうだ。クロエ、そろそろ誕生日だろ?」

床に座りながらセネルが言う。
クロエもそれに習い床に座る。
スカートにしわがついたりしないように注意しながら。

「お・・・覚えていてくれたのか?」
「当たり前だろ」

クロエはともかく嬉しくなった。
正直、ワンピースのことなどどうでも良くなっていた。

「それで、どんな物が欲しいのか、俺全然わからないからな。直接クロエに聞こうと思って」
「そんな・・・別に何だってかまわないのに」

本当に何だってかまわない。

「う〜ん・・・」

何でもと言われると、余計に悩むもの。

「・・・クーリッジがくれる物なら、何だって嬉しいから・・・」

クロエが微笑みながら言う。
その笑顔が、セネルの胸を疼かせる。
見慣れぬ女らしい服を着ていることも起因する。

「・・・その服、よく似合ってるな」
「え!?」

突然いきつきたくなかった話題を出され、クロエは戸惑う。
顔が赤くなる。
顔を見られまいと俯く。
やっぱり着て来るべきではなかったと、ひどく後悔。

ふっと風が動いた気がして、顔を上げる。
すると、少し伸びたクロエの黒髪を、優しく自らの指に絡ませるセネル。

そっとクロエの唇に触れるセネルのそれ。

唇が放れる。

「な・・・何をするんだ!」

突然のキス。
驚かずにはいられない。

「何でって・・・」

セネルは少し顔を赤くしながら頭をかく。

「クロエがかわいいから」
「!!!」

ともかく恥ずかしくなった。
顔を俯かせ、セネルの顔を見ようとしないクロエ。

「クロエ」

セネルが名を呼ぶ。
すると、クロエは真っ赤な顔をして上目遣いでセネルを見る。
その表情に、ついにセネルの理性は崩壊を始める。

俺だって男なんだぞ
そんな顔されたら・・・

セネルはクロエの両肩に手を置き、再び口付ける。

「!」

クロエの力が抜けたのを見計らって、彼女の背中を床につける。
美しい黒髪が、床に広がる。
何事かと驚いて、少し開かれたクロエの口内にセネルは深く侵入する。

「!?・・・ん・・・」

さらに力が抜けていくクロエ。
セネルは、今度はクロエの両手の手首をつかみ、自分の手で床に縛り付ける。
そこで、ようやく唇を放す。

「はぁ・・・ちょ・・・クーリッジ!?」

息遣いが荒く、そして今まで以上に顔を真っ赤にしているクロエ。
そして、不敵に笑うセネル。

ここから先は、ふたりのみが知る甘い時間。

END

2005年12月執筆
2008年3月修正

は…恥ずかしい…!!昔の私恥ずかしいッ!!
甘い小説を書きたくて頑張っちゃった結果がこれですね…。
今の私では絶対に書けない気がします…いい想い出…ということにして逃げようと思います。脱兎のごとく!
では、読んでくださった方、本当にありがとうございました!
2008年3月9日