想いの狭間〜sideL〜 まだ彼女に出逢う前だ。 俺は精霊の森の奥深くで、ひとりで生きていた。 周囲にエルフは沢山いたが、あいつらは俺を珍しいものを見るように扱いやがって、ずっと嫌いだった。 そう 俺はオーディンの器だから。 いざって時の代替品だから、死なれては困るんだ。 誰も彼も、俺を「俺」とは見てくれてなかった。 おかげさまで、生への執着なんてすっかり失くしちまった。 生きていたってなんの意味もない。 俺は「俺」として生きることもできないんだ。 ただ、指輪を外して、自ら消えるなんて度胸なんかなかった。 「俺はどうしたらいい?」 天を仰げば、木々の間から垣間見れる青の空。 澄み切った、空の青。 誰か、そこから返事をくれるような気がした。 『ルーファス・・・』 夢を見た。 久しぶりに、深く深く眠った。 いつもなら、エルフ共に気を尖らせているからあまり眠れないはずだった。 しかし、その日は違った。 俺の目の前に、ひとりの女の子がいる夢。 その娘の後ろは何かが眩しく光っていて、その逆光で彼女の顔がよく見えない。 ただ、金の髪が美しく光る少女。 あんた・・・誰だ? 『 』 聞こえねぇよ その少女がなにかを言っているのはわかるが、何故か声が聞こえない。 『 』 少女は胸に手をあて、まだなにか言ってくる。 だから・・・あんた誰だよ? なにを言ってるんだ? ・・・俺は・・・ 『 』 待っている・・・? やはり声は聞こえないが、そう言ったように感じた。 すると、少女の姿が段々と光に飲み込まれていく。 ちょっと待て、俺の質問に答えてくれ! 待ってくれ!! 目が覚めると、何故か気分が良かった。 あんな不思議極まりない夢を見たにも関わらず、心は今まで経験したことのない程にすっきりとしていた。 あの少女は誰だったのか 俺の心を占めるのはそれだけだった。 光の中、俺に逢いに来てくれた天使みたいな少女。 なんて、自分らしくない解釈をして恥ずかしかったが、“天使”という表現はしっくりきた。 「よし・・・」 俺はその日、森から抜け出す決心をした。 こんな所にいるのも飽き飽きだし、外の世界を見てみたい。 そして、あの少女に逢いに行こう。 そう思ったんだ。 逢えるかなんてわからない。 この世界に存在するのかもわからない。 ただ逢いたいと思ったから。 そんなわけで、今に至るわけだ。 森を抜け出して、ディパンの噂を聞いて。 そして 君と出逢ったわけだ。 で、あの少女とは逢えたのかって? ・・・まぁ、逢えたんじゃねぇかな。 いまいちわかんねぇんだ。 でも、なんとなくわかってる。 あの時、俺の前に現れたのは君だって。 なぁ、アリーシャ。 END 2006年7月執筆 2008年3月修正 運命です。 導かれたのですよ、うんうん。 では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月14日 |