想いの狭間〜sideA〜 まだ彼に出逢う前。 小さな古城で、私はこのまま寂しく死んでしまうんだと思っていた。 城の兵士達も、私をおかしなものを見るように接するから・・・ いつも、私は独りだって思ってた。 そんなはずないのにね。 私には、いつもシルメリアがいたから。 でも やっぱり 独りだと思う時は多かったの。 シルメリアだけじゃなく、沢山のエインフェリアの人達の声も聞こえる。 城の兵や、メイドの声も聞こえる。 なのに、私は「私」の声が聞こえない。 「本当は・・・私、どうしたいの?」 お父様に逢いたい? シルメリアから離れたい? 生きたい? 死にたい? 本当の「私」の気持ちは・・・? 『アリーシャ』 いつの間にか寝てしまった時だった。 窓際で、暖かい陽の光に包まれて、思わずうたた寝してしまった。 夢を見たの。 知らない男の人の夢。 背が高くって・・・でも、顔がよく見えない。 あの・・・ 『 』 え・・・? なんて言っているんですか? 聞こえない。 あなたは・・・誰ですか? 『 』 あなたは・・・ 私に、新しい景色を見せてくれますか? その人は頷いてくれたように見えた。 目が覚めると外はもう真っ暗で、いつの間にか夜になっていた。 冷たい風が頬や髪を撫でるのが心地よくて、しばらく暗い外を見ていた。 『アリーシャ』 「シルメリア?」 『風邪をひくわ。早く窓を閉めなさい』 「・・・うん」 シルメリアに言われ、大人しく窓を閉める。 その瞬間、城の周辺の木々が大きくざわついた。 ・・・あの人、誰だったのかしら? 木々の緑が目について、思い出した。 やけに鮮明に覚えている、夢の中の男の人。 あの人は、「私」の声を聞いてくれるかしら? 何故か顔もわからぬ人に、そんな期待を抱いた。 もしかしたら もしかしたら あの人に逢えば そう思ったの。 色々なことがありました。 アーリィという、シルメリアのお姉さんのヴァルキリーに追われて シルメリアの言うとおりにディパンに行くことになって。 そして あなたと出逢った。 今思うと、あの夢に出てきた人って、あなただと思うの。 確証なんて無いのだけど、そんな気がするの。 だって、あなたは「私」を見てくれる。 ね、ルーファス。 END 2006年7月執筆 2008年3月修正 運命だというの…ッ!? と、いうことで、二人の出逢いを運命的に演出することに。 では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月14日 |