That is no business of yours!


ルークが嘘をついたり、隠し事をするのが苦手なのはよくわかっていた
すぐに態度がおかしくなってしまうのだから、弥が上にもわかるのだ

だから、今回だってすぐに何かを隠していることに気が付いた









That is no business of yours!









「ルーク」

彼の背後から名を呼ぶ。
するとあからさまにルークは肩をびくつかせ振り返る。

「ティ・・・ティア」
「・・・・・・」

ティアはルークの態度にひどく悩んだ。
自分が何かしてしまったのかと不安になった。

「ねぇルーク。私、あなたに何かしたかしら?」

耐え切れず尋ねる。
するとルークは素早く返答を叫んだ。

「な、何もしてねぇよ!全然何もしてない!」
「・・・じゃあ、どうして私を避けるの?」
「避けてなんか・・・」
「避けてるわ」

ここ数日、ルークのティアに対する態度は大袈裟に言えばまるで化物でも見るかの様なものであった。
目が合えばすぐ逸らす。
隣に立つと体をびくっと震わせる。

それと・・・

「それに、あなた最近ちゃんと眠ってる?」
「ね、寝てるよ」
「嘘。顔色もあまり良くないし。最近ルークが夜更かししてるってガイが心配してたわよ」
「う・・・」

言葉に詰まるルーク。
詰め寄られる彼の姿は、大きな犬に睨まれ吼えられる子犬そのもののよう。

「ねぇルーク。本当にどうしたの?何か私にできることがあるなら・・・」

そうティアが彼を心配してそう言うと

「お、お前には関係ないだろ!」

ルークは声を荒げてそう言った。
すぐにハッとして、小さくごめんと呟き走ってティアの前から姿を消した。

ただ、ティアは呆然とするだけだった。

「ルーク・・・」

『お前には関係ないだろ!』

ひどく胸が軋む言葉だった。
彼に拒絶されるのが、こんなにもつらいことだと思いはしなかった。
そう思うと、ティアの想いはつのるばかり。
少し溢れそうになった涙を拭いながら、ティアはルークが去った方向を見つめた。




今日の野営の場は、星がとても美しく見える森。
寝ずの見張り番はガイ。

昼間のルークの言葉が胸をかき乱すために、ティアは寝付けずにいた。
完全に冴えている目を使い辺りを見ると、火の傍であぐらをかいて座るガイの姿。
そして、眠る仲間。
しかし、ルークの姿が無かった。
そのことに気付いたティアは、体を起こしガイの傍へ行く。

「ガイ」
「ティア。眠れないのかい?」
「えぇ・・・。あの・・・ルーク、どこに行ったか知らないかしら?」
「へ?あ〜・・・あいつは・・・」

語尾を濁すガイ。
ガイは何かを知っているのだと確信したティアは彼に詰め寄る。

「あなた、ルークが最近私を避けている理由を知っているのね!」
「う、うわぁ!あ、あんまり近・・・く・・・」
「教えて!」
「・・・お、俺の口からは言えないんでね。ルークは森の奥に行った。あいつに直接聞きな」

ガイは森の一点の方向を指さした。
その先に彼が居るという。
ティアはガイに礼を言い、走って森の中に入っていった。

「すまねぇ、ルーク・・・」




月明かりの下、ルークはひとり佇む。
その手にはある物が握られている。
そして、何度も意味の無い深呼吸を繰り返す。

「ルーク!」
「ティ、ティア!?」

駆け寄ってくるティアに驚きを隠せないルーク。
握っている物を見られないように手を後ろ手に回す。
ルークは彼女のことだからまた怒られるのではと思った。
だが、ティアがとった行動は思いもよらないものだった。

「ティア・・・」

ティアは、ルークにタックルでもかますような勢いで抱きついた。
細い腕で力いっぱい抱きついた。

「あ・・・あのさ・・・な、なに?」
「あなたには関係ないわ!」
「?」

ティアの言動に困惑してしまうルーク。
ただ、自分の胸に顔を埋めて抱きついてくるティアがいとおしく思えた。

「ティア・・・」

ルークがティアの背に腕を回そうとする。
その瞬間にティアはハッとして、腕を放し一歩後退した。

「わ・・・私・・・」

顔を赤くして明らかに錯乱しているティア。
何が何だかわからないのはルークも同じ。

「えと・・・どう・・・した?」
「・・・・・・」

ルークの問いに一瞬は迷ったが、ティアはゆっくりと口を開き答えた。

「あんまり・・・あなたが私を避けるものだから・・・不安に・・・なって」
「不安?」
「・・・多分」
「なんだそりゃ」
「わ、私だってよくわからないんだもの・・・」

ふたりして混乱してしまっては埒が明かない。
ルークはティアの誤解を解こうと話はじめた。

「俺は・・・ティアを避けてたわけじゃないんだ・・・」
「どういうこと?・・・だって、あなた最近・・・」
「その・・・まともに顔が見れなくて・・・」
「どうして?」

ティアは一歩ルークに近づき詰め寄る。
少しばかり眉間にしわを寄せたティアの表情に、ついにルークは根負けした。

「これ・・・」

ぶっきらぼうにそう言って、ティアの眼前に握り締めていたビーズの連なりでできているブレスレットを差し出した。

「なぁに?これ・・・」

ブレスレットを半分無理矢理に渡されながらティアは尋ねる。

「バレンタインのお返し・・・」
「・・・え!?」
「いや・・・ホワイトデーに返すってのは知ってんだけどよ・・・」
「じゃあ、どうして・・・また大佐に何か吹き込まれたとか?」
「ちっげーよ。その・・・早く形としてお礼がしたかったっつーか・・・」

ティアはビーズのブレスレットを眺める。

「これ・・・あなたが作ったの?」
「あ・・・うん・・・。アニスに教えてもらったりして・・・」
「・・・ガイに口止めもして?」
「・・・うん」

ルーク手作りのブレスレットは、やはり男性が作ったからか不格好だ。
しかし、色とりどりに連なるビーズの色彩は美しいもの。
これを作るためにルークは夜更かしをした。
突然渡してティアをびっくりさせてやろうとした。
だから隠し事が下手な彼はティアを避けた。
全ての事情を知っていたガイは、ルークの夜更かしを心配しつつ彼に協力していた。

すっと胸の中にあったわだかまりみたいな物が抜けていくのがティアにはわかった。
わかってしまったら、なんだそんなことかという気持ちができる。
そして、彼が自分のためにしてくれたことを想い顔を火照らせる。

「ありがとうルーク」

はっきりとそう口にしてから、ティアは少しだけ背伸びをしてルークの頬に口付けをした。

「!?」

ティアはこの上ない幸福を感じながら、皆が寝ている場へと戻る。
ルークは彼女の名を呼びながら後から追いかけてくる。

ふたり共顔が赤かったかめに、ガイになにをしてたんだと笑いながら問い詰められたのは言うまでも無い。

END

2006年3月執筆
2008年3月修正

ティアが攻めるティアルクというリクエストだったはず。
…あれ?普通にルクティアじゃん。あれれ?
覚えたての英語を使いたくてこんな題名に(笑
あの頃は若かった…。
では、読んでくださった方、本当にありがとうございました!
2008年3月13日