合縁奇縁のメヌエット 「シンク・・・」 「なに?」 「・・・・・・」 別に普通に返事をしているつもりなのに、いつも冷淡な口調になってしまう自分が嫌いだった。 「・・・ううん・・・何でも・・・ない」 「あ、そ」 時折、この小さな少女に声をかけられじっと見つめられる。 きっとその少女アリエッタは、僕が“イオン”に近いことを感じているのかもしれない。 そもそも僕はオリジナルイオンを知らない。 顔や声は僕と同じだろうが、性格とか好き嫌いとかそんなものは一切知らない。 必要もないしね。 でもアリエッタは知っている。 だから、僕がどこかで“イオン”と似ていると感じることもあるかもしれない。 それは、僕にとって、そしてアリエッタにとって良いことなのかはわからない。 アリエッタはおどおどしていて、正直見てて苛々する奴だ。 でも六神将の中じゃまるでお姫様。 まぁ、しょうがないのかもしれないけどね。 ともかく、僕はあいつが好きじゃなかった。 ある日のこと。 アリエッタがいつも抱えている人形が紛失してしまった。 リグレットやラルゴが懸命に捜索したが、なかなか見つからなかった。 「・・・う」 すでに半泣きのアリエッタを前に、僕はますます苛ついた。 あんな人形の何が大切なのかが理解できなかったね。 でも、あんまりにもつらそうな顔してるのが気に入らなかった。 「なんで僕が・・・」 頼まれたわけでもないのに、あいつの人形を探してやってる自分が嫌いだった。 馬鹿みたいだった。 でも人形を見つけ出せた時、あいつが笑ってくれるとこを想像してしまったことの方が馬鹿みたいだった。 「ありがとう・・・シンク・・・」 「・・・別に。たまたま見つけただけだからね」 アリエッタはやはり笑ってくれた。 そして僕はどうしても気になったから訊いてみた。 「どうしてそんな人形が大事なの?無くなったら新しいの買えば?」 「・・・これ・・・抱いてると落ち着く・・・から。他は・・・嫌」 「・・・代用品じゃ駄目?」 「・・・うん」 代用品じゃ駄目だって。 本物じゃないと駄目なんだ。 じゃあ“イオン”の代用品として生まれた僕は? 替わりとしてすら不完全な僕は。 ピースがひとつでも欠ければ完成しないパズルのよう。 僕には足らないものが多すぎる。 じゃあ、必要なピースは? また僕をじっと見てくるアリエッタ。 「なに?」 「・・・シンク・・・優しい」 「は?」 唐突に何を言い出すんだこいつは。 「イオン様も・・・優しかった・・・」 “優しかった”と過去の物言いなのは、アニスが導師守護役になってから“イオン”は変わってしまったということだろう。 「あいつと一緒にしないでよ」 僕はそう言い放ってアリエッタの前から消えた。 逃げたとも言うのかもね。 僕は今、なんて言った? 誰かと同じであることを拒絶した? “イオン”の代替え品としても役に立たないのに? 馬鹿馬鹿しい。 “イオン”として。 偽者でもかまわない。 あいつにとっての“大切な人”に自分はなれるだろうか? END 2006年3月執筆 2008年3月修正 シンアリ好きです。 シンクが悩んでるのが好きです。 鬼畜じゃあないです。 では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月13日 |