ここからはじまる幸せを


ここからはじまる幸せを


「なぁ、クロエ」
「なんだ?」

テキパキと料理をするクロエ。
ぼーっとその姿を見つめるセネル。

「俺たち、一緒に暮らし始めてどのくらいだ?」
「へ?」

突然の質問に目を見開くクロエ。

「そ・・・そうだな・・・半年・・・それ以上か」
「だよな」

何か納得の様子で頷くセネル。

「どうしたんだ、セネル?」

いつのまにか「クーリッジ」ではなく「セネル」と呼ぶようになったクロエ。
呼び方なんて些細なもののような気がするが、やはりファーストネームで呼ばれるほうが嬉しいと感じるセネル。

「じゃあ」
「今度はなんだ?」

調理の手を休めず言う。

「俺たち、恋人になってどのくらいだ?」
「な・・・また・・そんな」

再び驚いてしまうが、料理は続ける。

「そうだな・・・もう・・・3年か・・・4年か・・・」
「だな」

また頷くセネル。
長い間、恋人として過ごしてきたセネルとクロエ。
今はセネルの家で共に暮らしている。
しかし、ただ一緒に暮らしているだけ。
まだ、結婚しているという訳ではないのだ。

「なんだ?突然そんな質問をしてきて」
「え・・・いや・・・その」

珍しくセネルが口ごもる。

「それより」
「話を反らすな」
「反らしてない」
「反らした」
「クロエ、最近病院行ってるよな?」
「え!?」

結局そのまま話を反らされ、また新たな質問をされるクロエ。
そして、動揺する。

「やっぱりな・・・何か病気なのか!?」
「え・・・いや・・・」

ついに調理の手を止めてしまうクロエ。
そして、ごもごもと口ごもる。

「その・・・だな・・・」
「なんだ?」
「・・・・子供が・・・できたんだ」
「・・・へ!?」

小さな小さな声で、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてクロエは言った。

「それって・・・俺とクロエの?」
「ほ、他に誰がいるんだ!!」

ふたりの子供。
その響きに、セネルは有頂天になった。

「クロエ!」
「わっ!」

唐突にクロエを抱きしめるセネル。
そして、すぐに口付けをする。
長く長く。
しだいに息ができなくて苦しくなったクロエが、セネルの胸をバンバンと叩きだした。
すると、セネルは唇を放す。

「ぷはっ・・はぁ・・・なにをする!」
「いや・・・つい・・・嬉しくてな」

にんまりと笑うセネルに、クロエは怒る気を失う。

「それに、ちょうど良かった」
「なにがだ?」

セネルは、抱きしめていたクロエを解放し、自分の服のポケットを漁る。
出てきたのは、小さな箱。

「これは・・・?」

セネルは箱をクロエに渡す。
クロエは箱を開けてみる。
姿を現したのは、とてもとても美しい光を放つもの。


指輪。


美しく光るそれは、細やかな細工の中心に、ピンクとも白銀ともとれる色をした宝石を携えている。

「キレイ・・・」

その美しさに見惚れるクロエ。

「クロエ」
「?」

突然、真剣な声で名を呼ばれて驚く。
セネルは、真っ直ぐにクロエを見る。

「結婚して、これからも、ずっと一緒にいてくれるか?」

その言葉に、クロエは驚き、恥ずかしそうに笑い、そして涙した。

「あぁ・・もちろんだ!」

セネルは再びクロエを強く抱き、口付けする。
長く。
そして深く。

これから先の、幸せな未来を確かめるように。

END

2006年3月執筆
2008年3月修正

キリ番リクエスト、甘いセネクロでした。
ついにここまでやったか自分。甘いの通り越してしまいましたね。ついうっかり!
シャーリィはお兄ちゃんよりも女の友情が大切なので、めちゃくちゃクロエを祝福してくれるのです。
では、読んでくださった方、本当にありがとうございました!
2008年3月9日