明日、最後の戦いになる。 その重みを、誰よりも背負い、そして己の死の恐怖さえも背負う背中。 その背中・・・ ルークを見る度、泣きそうになる。 本当に泣きたいのは彼だろうに。 ただ、ティアの胸は締め付けられる。 私は・・・なんて無力なのかしら・・・ ここにいること 「ルーク」 「ん?」 アルビオールから見えるエルドラントは、月明かりの逆光により暗く淀んだものに見える。 「・・・・」 「なんだよ?」 「・・・恐くないの?」 「・・・そりゃ恐いさ」 「そうよね・・・馬鹿ね私」 恐くないわけがない。 最後の戦いを前に。 自分の死を前に・・・。 「俺・・・ホントにいつ消えるのかな・・・」 呟く彼の横顔がつらい。 「あなたは消えない!」 気が付いたらティアは叫んでいた。 そして、そっとルークの手を握る。 「だって・・・あなたはここにいる」 堪えていたはずの涙が溢れ出る。 「ちゃんと・・・触れるもの・・・ここに・・・いるもの」 「ティア・・・」 次々に流れる涙。 その涙に、罪悪感を覚えるルーク。 「泣くなよ」 「だって・・・」 ティアが自分のために泣いてくれているのだと、ルークだってわかっていた。 しかし、こんな時に・・・ 泣いている女性に、なんと声をかけて良いのか。 ルークにはわからなかった。 ただ、ルークはティアの手を優しく握り返した。 「俺・・・お前を泣かせちまうなんて・・・駄目な奴だな」 ルークは空を見て。 ティアは俯いて。 「お願い・・・約束して」 「約束?」 俯いていたティアが顔を上げ、ルークと目があう。 「これからも・・・一緒にいてくれるって・・・」 涙に濡れたティアの瞳は真剣そのもので。 しかし、ルークは戸惑う。 いつ消えるかもわからない自分が、そんな約束を交わして良いものか。 ただの気休めにしかならないのではないか? 無意味なんじゃないのか? ただ・・・ もうティアの涙など見たくなかった。 「じゃあ・・・ティアも約束してくれ」 「・・・なに?」 「もう泣かないって」 「・・・わかった」 笑顔を見せてくれるティア。 また少し罪悪感。 ティアは、握る手の力を強くする。 隣の存在を確かめるように。 大丈夫。 この人は確かにここにいるのだから。 そう強く信じている。 握られた手の暖かさが心地よくて、ルークは目をつぶる。 自分は、誰のためでもなく自分のために生きている。 だけど、もし誰かのために生きるのなら。 傍らの彼女のためがいい。 そう強く思いながら。 ふたりを照らす月の光は、それはそれは美しい光。 END 2005年12月執筆 2008年3月修正 最終決戦前アルビオール。 ルークとティアのふたりが交わす約束は、やっぱり最後の「必ず帰る」が最優先だと思うのですが、これも約束です。 く…これもコメント書きづらい…ッ! では、読んでくださった方、ありがとうございました! 2008年3月11日 |