ティア・・・ 声がする。 大好きな彼の。 ティア・・・ 呼んでる。 行かなくちゃ。 さよなら・・・ え? 待って どこに行くの? 置いていかないで! 「ルーク!!」 しーくれっと 「・・・夢?」 爽やかなはずの朝。 宿のベッドの上で飛び起きたティアの額からは汗が流れる。 少し息も荒い。 「嫌な夢・・・」 ポツリと呟いたその瞬間、下腹部に鈍い痛みを感じて顔を歪ませる。 「あれ・・・」 は、と気付く。 自分が全く服を着ていない事に。 再び痛む下腹部。 そして・・・。 横でもぞりと人が動く気配。 「!?」 よく見れば、傍らでは赤毛の少年がすやすやと眠っている。 それはもう仔犬のように。 彼もまた、服を着ていない。 「ル、ルーク!?・・・え、ええと、ちょっと待って・・・昨夜は確か・・・」 突然の事に、とりあえずティアは記憶を整理し始めた。 ともかく、これは“既成事実”という奴かと混乱しつつも、昨日の事を思い出してみる。 そう・・・昨日は大佐が自由に行動していいっていうからルークとふたりで買い物に行ったんだわ・・・ その時ミュウは留守番になってしまったのが気がかりだったのも覚えている。 しばらくしたら急に雨が降ってきて、ふたりしてずぶ濡れになって・・・ 急いで宿に戻って、シャワーを浴びて・・・ それから・・・? 「!!!!」 顔が急激に熱を帯びる。 思い出すだけでもう真っ赤っか。 「わ、私・・・ルークと、ね・・・ねちゃ」 考えるだけで真っ赤っか。 再びもぞっと横でルークが動くと、ティアは大げさに驚いてしまう。 「・・・」 しかし、何も知らず眠るルークの表情は幸せそのもの。 「・・・しょせん・・・夢、よね」 先程見た悪夢がふと蘇った。 ルークが暗闇に消え、どこかへ行ってしまう夢。 ティアはそっとルークの髪を撫でる。 「どこにも・・・行かないよね・・・」 そんなことわかっているのに、何故か胸が締め付けられて・・・。 自然と涙が出てしまった。 「ルークは・・・ずっと、一緒に・・・いてくれるよね?」 現実にはしない。 あなたは私が守るから。 「どこにも行かねぇよ」 「!?」 急に声がしたと思うと、ルークはいつの間にか目を開けていてティアの手を握っている。 「ずっと一緒だ。だから泣くなよ」 「・・・えぇ」 ふたりで少し微笑む。 「・・・って、ルーク・・・いつから目が覚めていたの!?」 「え、あ・・・」 目をそらすルーク。 嘘が苦手な彼は、圧倒的不利な状況に陥った場合は逃げ腰。 「・・・ティアが起きた時に・・・俺も起きた」 「ずっと寝たふりしてたの・・・?」 「だ、だって起きるタイミングがっ!」 「言い訳しないで!女性の独り言を聞くなんて最低よ!」 「でええええ!!・・・昨日のティアは可愛かったのに・・・」 「ルーク!!」 理不尽なティアのお怒りを存分に買ったルーク。 その後しばらく、ルークはティアに近付けなくなりましたとさ。 「大佐〜あのふたりどうしたんですかねぇ?」 「いや〜若い証拠じゃないですか〜?」 「ふ〜ん」 END 2006年7月執筆 2008年3月修正 げふげふ…ッ! なんとコメントしたら良いものかわかりません、げふげふッ! とりあえず逃げようかと思います、脱兎のごとく! では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月13日 |