はじまりの想い 第一印象は最悪。 勝手に山賊と間違えてしまった私も悪いのだが、人のことを無鉄砲女などと呼ぶなんて、無礼極まりない。 それに、なんて自分勝手な奴なのだろうと思った。 妹を助けたいがために、一心不乱になる心意気には感心する。 だが、それ故に周囲を見ないのは納得いかない。 だから、ひとでなし、と言ってやったこともある。 周囲を見ない行為は、時に自らを滅ぼすのだぞ。 そう、自分を棚に上げて言ってみたり。 セネル・クーリッジ。 最初、あいつのことはどうにも好けなかった。 それが変わったと言えば、毛細水道からだ。 私がカナヅチだということがバレてしまったあの時。 「俺がついてるから」 水に飲まれていく意識。 かすかに聞こえたクーリッジの声。 目が覚めた後も、相変わらずクーリッジの態度は冷ややかなものだった。 でも、かすかに優しさが滲んでいた気がしたんだ。 それは、贔屓目だろうか。 その後、クーリッジとその妹シャーリィは、血がつながっていないことを知った。 しかし、クーリッジにとっては、そんなことは関係が無いようだった。 何であれ、シャーリィは大切な妹。 だから助けたい。 助けなくてはならない。 そんなクーリッジの背中を、押したいと思った。 共に戦い、手助けしたいと思ったんだ。 騎士として、ではなくて・・・。 ステラさんという人がいた。 クーリッジの、とても大切な人。 私に、ステラさんの事を話してくれた時のクーリッジの表情は、少しつらそうで、少し悲しそうで、少しうれしそうで。 はじめて見るクーリッジの表情。 ステラさんに感謝した。 そのステラさんが亡くなった。 クーリッジの叫びは、今も強く耳に残っている。 大切な人を失くす痛み。 それがどれ程のものか、私には分かる。 だから、心配した。 そして、クーリッジを身近に感じた。 その後、シャーリィと敵対することになってしまった。 わからないことだらけで、押し潰されそうなクーリッジの肩。 何と声をかけたら良いのかわからなかった。 だけど、沈み込んだクーリッジなど見たくなかった。 お前の後ろは、私が守る。 守りたいんだ。 だから、どうか前を見て歩いてくれ・・・。 「お前の力を貸してくれ」 深い意味なんか絶対に無い。 でも、その一言がうれしくて。 また、手を貸し、共に戦いたいと思った。 その気持ちの名前は知っていた。 初めて、クーリッジのことをセネルと読んだ、あの瞬間。 つらそうなクーリッジの顔が、痛々しくて。 でも、少し苛立って。 思いっきり叫んでやったら、スッキリした。 「お前のおかげだ」 ううん。 私はただ、背中を押しただけだから。 好きな人の想いを、守ってあげたかっただけだから。 好きなんだって自覚すると、どうにも恥ずかしくて仕方なかった。 でも、幸せな気分になれた。 でも でも、かなわないのは、わかっているから。 「クロエ、たたみかけるぞ!」 「あぁ、まかせてくれ!」 隣。 その場所で幸せだから。 そこに立たせて。 髪を撫でる潮風。 穏やかに輝く海。 船の甲板に、幾つかあるうちのひとつの椅子。 クロエはそこにいた。 寝てしまっていたのか 夢を見ていた気がした。 大切な仲間達。 そして・・・。 「クーリッジ」 その名を紡いだ小さな声は、波の音に消された。 2ヶ月ぶりに逢える、大切な人達の姿を思い浮かべる。 「皆、元気でやっているだろうか」 視界に入ってきた遺跡船を見て、呟く。 久しぶりに、立てるかな。 あの場所に。 見れるかな。 あの笑顔。 切ない気持ちと、うれしい気持ちと。 波に揺られて、またやってくる。 END 2005年12月執筆 2008年3月修正 キャラクエ序奏のセネル←クロエの独白ですね。 鈍感セネセネを尻目にクロエは色んな葛藤をしているのです…およよ。 あんな鈍感さんにクロエちゃんは正直もったいない気がするですよ! セネクロが好きなのはクロエちゃんが大好きだからだZE! セネセネはちょっとモテすぎですよね…。で、でもそこまで嫌いじゃないよお兄ちゃん! では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月9日 |