sweet fang 「ったく・・・ジェイドのやつ・・・」 深くため息をひとつつくルーク。 傍らのベッドには、だらんと横たわるティア。 ティアは完全に眠っているわけではなし。 しかし、どこか夢見心地の状態で。 ようするに、ティアは泥酔している。 ことの発端は、興味本位で酒場に向かうジェイドについて行ったことだった。 「大佐のお酒・・・キレイな色ですね」 「えぇ。ですがとても強いですよ〜♪」 少し暗がりの雰囲気の漂う大人の場。 ルークもティアも未成年なのだから、本来はこんな所に来てはいけないのだろうが。 酒の匂いが充満している。 それに、女性達の化粧の香り。 よくこんな所に居て平気な顔をしてられるよ、とルークは酒を飲むジェイドとその酒を眺めるティアを感心する。 「ティアも飲んでみますか?」 「え?」 悪戯っぽい笑みを浮かべるジェイド。 こんな顔の時はろくなことがない。 「流石に私が飲んでいるのでは倒れてしまいますから・・・」 「つーか、ティア未成年だろ」 「大丈夫ですよ」 楽しそうにジェイドが持ってきたのは、透明なグラスに注がれた美しい青の酒。 海を思わせる青に、思わずティアは見とれてしまう。 「“甘い牙”というお酒ですよ」 「甘い・・・」 「えぇ、甘いです」 「嘘くせぇ・・・」 ジェイドが「甘い」と言うものは、きっと「からい」ものである。 ルークはそんな気がしていた。 ティアがその酒を飲もうとするのでルークは止めようとするが、既にティアは酒を口にしていた。 最初はどうってことなかった。 しかし、酒の味の予想外の美味しさにティアは酔いしれてしまった。 ジェイドの口車に乗せられ、ティアは泥水するまで飲まさせた。 その結果がこれだった。 ルークは酔いつぶれたティアを宿に運び寝かせた。 ぐでんぐでんという言葉がピッタリな程酔っているティア。 思わずため息が漏れる。 「ん・・・ルー・・・ク」 「ティア?」 ティアがか細い声でルークを呼ぶ。 「み・・・ず・・・」 「みず?水が欲しいのか?」 「・・・うん」 「わーったよ」 コップ一杯の水を持ち、ルークは再びティアの居る部屋に入った。 「ティア、水持ってきた」 「う・・・ん・・・」 起き上がれないのか、ティアは小さな声で返事をするだけ。 瞳を閉じていて、半分眠りに陥っている。 それでもティアは飲み物を求めているようで、か細く「水」と呟く。 ルークは困惑する。 だが、意を決して行動を起こすことにする。 「お前が悪いんだからな・・・」 不可抗力であると自分に言い聞かせる。 ルークはコップを手に取り、そして水を一口だけ口に含む。 そっとティアの頬に触れる。 ゆっくりと顔を近づけ、口付ける。 つながった部分から水を流し入れる。 唇を放すのを口惜しく思うが、一度離れる。 再び水を口に含み、また口移しをする。 時折、水が無くなっても唇を放さなかった。 意識が半分以上溶けてしまっているティアは、なんの抵抗もしてこない。 「ん・・・」 たまに甘い声を漏らすだけ。 ルークは無我夢中でティアに水を与えた。 しばしば彼女の舌を自分のそれで絡めとったりもした。 その度に、ティアの口からはか細く甘い声が漏れた。 そして、コップ一杯の水がなくなった時には、ティアも完全に眠りに落ちていた。 ルークは言いようのない物足りなさを感じていた。 俺はこれ以上どうしたいってんだ? ただ眠るティアを見て、彼女は自分のものであるという証拠をつけたくなった。 酒のおかげでちょっとやそっとじゃ起きやしないはず。 だが、なるべくティアを起こさないようにして、ルークは彼女の首筋を自らの唇で軽く吸い上げ所有印をつけた。 「・・・・」 「ティア・・・大丈夫か?」 「頭がガンガンするわ・・・」 翌朝、ティアは完璧に二日酔いの状態になって起床してきた。 「昨日、お酒を飲んだ後のことも覚えていないし・・・」 「あ・・・うん」 ルークにとってこの上なく好都合だった。 昨夜の自分の行為を覚えられていたらどうしようかと不安だったのだ。 「でも・・・」 「ティア?」 「・・・ルーク・・・傍に居てくれた?」 「え?あ・・・うん」 ティアが少し頬を染めて尋ねてくるものだから、ルークは目をそらして答えた。 ルークの返事を聞き、ティアは優しく微笑んで。 「ありがとう、ルーク」 「う・・・うん・・・」 どこか嬉しそうに笑うティア。 そんな笑顔になんとなく罪悪感を感じてしまう。 別に悪いことをしたっつーわけじゃないし・・・ 言い訳がましいことを考える。 「やあやあ二人とも、良い朝ですね〜」 「ジェイド!」 「おや、どうしましたルーク?」 朝から爽やかな顔をしているジェイド。 ルークが何を言いたいかも見透かしているようで、不敵に笑っている。 「大佐!昨日のお酒はなんですか!?」 「あぁ、アレですか」 ジェイドが甘いと言った酒。 実際は随分とアルコールが強いものであったとティアはその身で味わったのだ。 まるっきり嘘を教えたジェイドに対し、怒りをあらわにする。 「すいません。私、味について間違えて教えてしまったようですね〜」 「まったくです」 「しかし、ルークにとっては十分すぎるくらい甘かったのではないですか?」 「なっ!!」 ニヤリと笑うその姿はまるで悪魔のようにルークには見えた。 その悪魔は、本当に全てを見透かしている。 「ルーク、どういうこと?」 「べ、別になんでもねぇよ!」 「いや〜若いですね〜」 その後しばらく、ルークはティアと目を合わせられなくなってしまい、ひどくジェイドを恨んでいたとか。 END 2006年2月執筆 2008年3月修正 ティアが甘えるルクティア甘々というリクエストでした。 ……昔の自分、よくこんなものを書いたものだと感心することしかできません(笑 今は自分は甘々小説を書くのが苦手だと悟ったのです…。 他の方の甘々小説で砂糖ガリガリするのが一番です! 自分のは砂糖に醤油を混ぜた味がします…。 では、読んでくださった方、本当にありがとうございました! 2008年3月12日 |