dear-親愛なる人へ-


dear-親愛なる人へ-


あれからしばらく経った。
あの戦いから。

先日、ルークの葬式に招待された。
しかし、生憎そんなものに興味は無かった。

だって彼は生きている
帰ってくるもの
約束したから

ルークのことを想うと、自然と涙が出ようとする。
ティアはそれを必死におしとどめる。

泣いちゃ駄目!

気を紛らわそうと、自室の下にある部屋へ向かう。
何か本でも読めば気が晴れるかもと、ほのかに期待して。

部屋に入ると、机の上に無造作に置かれた袋が目に入った。
旅の間に使用していた道具袋だった。
そういえば、ろくに整理もせぬまま放置していたのだと思い出す。
机の上の袋を手に取り、ひとつずつ中身を出していく。
薬やグミやなにやら。
色々出てくる。

最後に出てきた物は、とても使い込まれたひとつの手帳。

「これ・・・」

一目でそれが何かティアは理解した。

「ルークの・・・日記・・・」

手帳を手に持ち、固まる。
その中身を見たいと感じる。
だが、手は動かない。
ルークの書いた日記を読むという行為は、彼を想い出にしてしまう行為だ。
そう思った。

手が震える。

ふと、手帳のあるページの端が折り曲げられていることに気付く。
手帳の最後に近いページ。
何かに急かされるように、しかし恐る恐るティアはそのページを開く。
そのページを開いたとたん目に入った文字に、ティアは言葉を失くす。

『ティアへ』

彼の文字で、確かにそう書いてある。
ルークは、ティアに宛てた言葉を残していた。
その事実に、不安を覚える。

宛名に続く文章は、決して長くはない。
しかし、その文章を読むのが恐かった。
でも、読まなくてはいけない気がした。

彼の文字は、謝罪や感謝が述べられていた。
散々迷惑をかけたこと。
ずっと見ていたこと。
自分は消えてしまうこと。

ずっとたえていた涙が溢れそうになる。
先程と同じ不安が押し寄せてきたのだ。

彼は・・・帰ってこないのでは・・・

不安になる。
恐くなる。

まだ文章は続いていた。

『俺、お前に出逢えて本当に良かった』

それはこっちのセリフよ・・・

『ティアがずっと隣にいてくれて嬉しかった』

私だって同じよ・・・

『ティアのおかげで、人を大切に想うってことがどんなことかわかったんだ』

私・・・だって・・・


ついに涙が零れてしまう。

最後の部分は、何度も何度も書き直した跡が見受けられた。
その一文は、ただ一言。

『ありがとう』

「・・・・ばか・・・・」

端には、差出人の・・・・彼の名前がある。

ティアは手帳を閉じ、ぎゅっと強く抱いた。

帰ってきたら・・・めいいっぱい怒ってやらなくちゃ・・・

こんな言葉を残したことを
そして、私も言ってあげなくちゃいけない

ありがとうって

あの時、面と向かって言えなかった想いと共に。


ティアは、手帳を抱く力を強くした。

END

2005年12月執筆
2008年3月修正

切なさ目指して書きました。
ルーク登場してなくってもルクティアなんです!
では、読んでくださった方、ありがとうございました!
2008年3月11日